シュバンクマイエル、そしてトルンカ


 昔、小学生の時だったと思うんだけど2人の男(人形)がハムスターを取り合うという短編映画のような物を見たことがあった。
 幼いながらもその奇妙な世界観に不気味さを覚えてずっと頭の片隅に引っ掛かっていたのだけれど、まさか授業でその映画と再会を果たすことになるとは!

 その映画は『棺の家』というタイトルで、チェコの映画監督シュバンクマイエルという人が1966年に製作したものだそう。
 2人の道化師が1匹のモルモットを奪い合う。片方が相手を殺して遺体を棺に入れるがすぐに生き返り、生き返った方が相手を殺してもまたすぐに生き返り、というのを繰り返していくうちにお互い相打ちになってしまい、最後にモルモットは自由になる、というストーリー。
 当時の世界情勢から見て、2人の道化師=アメリカとソ連、モルモット=チェコということになるのでしょう。しかし厳しい検閲のもとでこの映画を完成させたシュバンクマイエルは本当にすごい(本人は「映画に政治的メッセージをこめようと思ったことはない」とコメントしていますが)。幼いころ何気なく見たものにこんなにも色々なモチーフが隠されていたなんて。

 そして授業で扱った人がもう1人いて、同じくチェコトルンカという監督。チェコは伝統的に人形劇やクレーアニメの製作が盛んなようで、他にも有名な監督は沢山いるみたいです。
 トルンカの作品は1965年の『手』を見たのですが、これもまるで3年後の「プラハの春」(民主主義政権が誕生するも、ほんの短い期間でソ連軍に制圧されてしまうという事件)を予言しているかの内容で、薄気味悪い後味の残る作品。