『祈りの痕跡』展


 六本木ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『祈りの痕跡』展に行ってきました。

 最初に痕をつけたのは、誰か。僕の頭の中は、いつもその疑問から逃れることができない。
 最初の文字たちの誕生である。
 五千年前にシュメール人が粘土板に楔形の文字を記した。その瞬間、思考や感情、才能、芸術や科学は永遠の命をもった。「書く」という行為ほど、人類に大きな影響を与えた発明はないと思う。

 「地球文字探検家」という肩書きの浅葉克己さんがディレクターを務め、さまざまなジャンルの美術家・芸術家・研究家の作品が展示してあります。
 展示作品の素晴らしさはもちろんのこと、お経やキング牧師の演説が流れていたりと会場の雰囲気も抜群。建物の構造も良いですね。
 日本では伝統的に漢字・ひらがな・カタカナという3つの文字を使って、近世には寺子屋が各地域に設けられ、もうその頃から「文字の読み書き」ができるというのは当たり前の教養とされていますが・・・。あらためて私たちがそれを当たり前に享受している事の素晴らしさが分かりました。あまりに当たり前すぎて普段は忘れてしまったりないがしろにされがちな部分ですが、でも文字の読み書きってとても神秘的な行為というか・・・。フレデリック・ダグラスの自伝を読んだ時の事を思い出しました。支配者が都合の良い様に、文字を学習することを禁じられた人たちがいた事、学ぶことは命懸けだった事、知識を得ることが解放に繋がる事・・・。
 さらに人間はそれだけでは飽き足らずに、デザイナーや書家という職業が生まれ、いかに美しく、人の心を揺さぶる文字を書くかという事に苦心しているわけですもんね。文字って凄い・・・。

 同じくミッドタウン内のサントリー美術館で開催されていた『小袖』展も見たかった*1のですが、こちらは財政難の折、断念・・・。学校にチケットあるかもしれないしね!

*1:1年の時にゼミで雛形(に描かれた小袖の文様)を読み解くという作業をしていたもので。